VirtuosのデータアナリストであるNathaniel Tanと、同社東京スタジオのプロダクションディレクターである中川亮氏による本稿は、『MCV/DEVELOP』1004号(2025年8-9月号)からの抜粋です。
Nintendo Switchでは、「どうぶつの森」や「スーパーマリオ」、「ゼルダの伝説」といった任天堂の人気シリーズが、引き続き代表的なタイトルとして牽引しています。家庭用ゲーム機でありながら携帯もできるハイブリッドな特徴が多くのゲーマーに支持され、世界で1.5億台以上を売り上げました。これにより、リビングのソファでも外出先でも遊べる新しいゲームのプレイスタイルを確立しました。
Virtuosが行った「人気のSwitchタイトル」に関する調査によると、売上上位作品の7割がESRB(アメリカのレーティング機構)の「Everyone(全年齢対象)」に分類されています。一方、PCゲームプラットフォームSteamの売れ筋タイトルには、「Everyone」に分類されるものが全くありませんでした。この調査結果は、任天堂が幅広い年齢層に受け入れられるゲームを戦略的に展開してきたことを示していると同時に、Switchのハードウェア性能が、より大規模で重厚なタイトルの開発には制約になっていた可能性も示唆しています。
Nintendo Switch 2の登場は、Switch 1の「カジュアルかつ魅力的」な体験を引き継ぎつつ、ハードウェアの制約を克服する可能性を秘めています。成功への鍵は、初代Switchを愛用するカジュアル層だけでなく、PCや他のコンソールでゲームを楽しむ「コアゲーマー」層にもいかにアピールできるかにかかっています。今回は、Switch 2のハード設計、ローンチタイトル、価格設定、新機能の観点から、その成功の可能性を探っていきます。
Nintendo Switchにおけるサードパーティの広がり
Switch 2は、AAAタイトルと呼ばれる高負荷なゲームにも対応できる性能を備えているとされており、その実例として、4月の「Nintendo Switch Direct」では『エルデンリング』『サイバーパンク2077』『ファイナルファンタジーVII リメイク』といった大作の発売が発表されました。これは、Switch 2がライトユーザーだけでなく、コアゲーマーにも魅力的なプラットフォームになることを示唆しています。
また、マイクロソフトのフィル・スペンサー氏は、任天堂との「10年契約」により、少なくとも8タイトルのXbox用ゲーム(例:『コール オブ デューティ』シリーズ)をSwitch 2向けに提供することを明言しています。さらに、フロム・ソフトウェアの新作『The Duskbloods』(2026年発売予定)は初の任天堂専用プロジェクトとされており、同社のSwitchプラットフォームに対する積極的な姿勢がうかがえます。
従来機のSwitchは、処理性能の制約から他機種との同時発売が避けられがちで、移植のための最適化コストもかさんでいました。しかし、Switch 2の性能が大幅に向上することで、他の主要なゲーム機やPCと同時にゲームを開発・発売することがより容易かつ効率的になり、コアゲーマーへのアピールがさらに強まると予想されます。
任天堂の本気、その先にあるもの
Nintendoの最大の強みは、常に独創的なゲーム体験と革新的なプレイスタイルを提供し続けてきたことにあると考えます。次世代機である「Switch 2」でも、この任天堂らしさを、どれだけファーストパーティタイトルで維持・強化できるかが成功の鍵となりそうです。ハードウェアの性能が向上することで、より大規模でビジュアルも優れた独占タイトルを展開できるようになり、プラットフォームとしての魅力をさらに高めることができます。
たとえば、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、ハードウェアの制約がある中でも素晴らしいオープンワールドを実現し、3,200万本以上を売り上げたことで、任天堂の卓越した手腕を証明しました。Switch 2では、PlayStationやXboxの独占タイトルと比べても見劣りしないビジュアル表現が可能になるため、コアゲーマーに「本気で選びたい一台」として選ばれる存在になるかもしれません。
強力なファーストパーティのラインナップに加えて、充実したサードパーティのタイトルも揃うことで、エコシステムはさらに活性化するでしょう。コアゲーマーが集まれば開発者も積極的に投資するようになり、ラインナップが連鎖的に拡大します。結果として、カジュアル層からコア層まで、幅広いユーザーに支持される強力なプラットフォームが確立されることが期待されます。
流通・価格・ハード面の課題
とはいえ、Switch 2が、いわゆる「コアゲーマー」を本格的に惹きつけるには、ソフトウェアのラインナップ、価格設定、流通といった面で課題が考えられそうです。
大作(AAAタイトル)が増えたとはいえ、PCや他の成熟したコンソール機と比べると、任天堂以外の作品はまだ少ないのが現状です。また、これまでのSwitchでは、新作の発売時期が遅れたり、価格が高止まりしたり、セールの機会が少なかったりする傾向があり、コアなユーザーからは「遊びたい新作がいつも遅れて出てくる」と見られかねないリスクがあります。
加えて、世界的な物価高や消費者のコスト意識の高まりにより、Switch 2の一部のタイトルでは価格が80ドルまで上がると言われています。年に何本もゲームを買うコアユーザーにとって、この価格帯は大きな負担となる可能性があります。
さらに、ハード面でも課題がありそうです。携帯性を維持しながら、最新のPlayStationやXbox、ハイエンドPCと同じ性能を期待するのは現実的ではありません。最高のグラフィックや高いフレームレートを求めるプレイヤーは、やはり性能面で妥協せざるを得ないでしょう。
こうしたことから、Switch 2がPCやPlayStation、Xboxから「メインのゲーム機」としての乗り換えを促すのは難しいかもしれません。おそらく、任天堂もそこを主な狙いとはしていないはずです。
それでも、Switch 2は、携帯ゲーム機として引き続き素晴らしい存在感を放つのは間違いないでしょう。たとえすべてのコアゲーマーがPCや他の据え置き機からSwitch 2に完全に移行することはなくても、Switch 1と比べてコアゲーマーの割合が増えることは十分に期待できます。
変わらない魅力と、革新的な進化
Switchは1.5億台以上を売り上げ、その魅力はSwitch 2にもしっかり受け継がれています。一番の魅力は、任天堂のビッグタイトルをより高画質で遊べるようになること。これにより「電源をつけるだけで遊びたくなる」機会が増え、買い替えの動機になるはずです。このことは、4月のNintendo Switch Directでたくさんのゲームが紹介されたことからもよくわかります。
また、Nintendo Switchを特徴づけてきた強力なソーシャルプレイは、次世代機であるNintendo Switch 2でも引き続き健在です。さらに、新たに搭載された「Cボタン」によってゲームチャット機能が利用可能になり、グループでのマルチプレイ、ボイスチャット、プライベートなゲーム配信がシームレスに連携。フレンドとの交流がこれまで以上に深まります。たとえば、『どうぶつの森』では、自分の島について友達と会話しながら一緒に遊ぶなど、より自然なコミュニケーションが可能になります。
従来は「同じゲームを一緒に遊ぶ」ことが中心でした。しかし、ゲームチャット機能により、「別のゲームを遊びながらでも、友達とコミュニケーションが可能」といった新しい遊び方が可能になります。これにより、既存のSwitchユーザーも「友達がSwitch 2に移行するなら、自分も移りたい」と感じる、十分なきっかけになりそうです。
Third Kind Gamesの最高製品責任者であるTim Dunn氏は、次のように述べています。
「選択肢が増えるのは常に喜ばしいことです。そして、Switch 2はまさにそれを実現してくれるでしょう。新しいハードウェアによって、これまで難しかった、より野心的なタイトルの開発が可能になり、また、後方互換性があることで、既存のプレイヤーはスムーズに移行できます。この2つが組み合わさることで、イギリス市場での力強い普及を後押しすると同時に、従来機のSwitchのライフサイクルをさらに延ばすことにもつながるでしょう。これはプレイヤーにとってもパブリッシャーにとっても朗報です。」
Switch 2の強化されたハードウェア性能は、Microsoft、CD Projekt Red、EAといった主要なゲーム開発会社が、このプラットフォームに積極的に参入する動機となっています。こうしたサードパーティの大作と任天堂自身の人気タイトルが揃うことで、従来のSwitchでは難しかった「コアゲーマーにも響くゲーム機」という姿が現実味を帯びてきます。一方で、任天堂の作品を好むカジュアルなユーザー層にとっても、新たなゲームラインナップや「ゲームチャット」のような進化は十分に魅力的です。このように、多様な改良点が組み合わさることこそ、Switch 2を「カジュアル層からコア層まで、あらゆるゲーマーを満足させる唯一無二なゲーム機」に押し上げる最大の強みとなるのではないでしょうか。
